春のすごしかた④


暦を気にし始めたのはかれこれ15年ほど前でしょうか。

その時読んでいた本に

「啓蟄」

という言葉を見つけて。

それからです。

なんの本を読んでいたのかはさっぱり思い出せないのですが

この言葉が、どうしてか、心に残ってしまいました。


啓蟄(けいちつ)

春の暖かさを感じて、冬ごもりしていた虫が外に這い出てくるころのこと。

「啓」には「ひらく、開放する、(夜が)明ける」などの意味、

「蟄」には「冬ごもりのために虫が土の下に隠れる、とじこもる」などの意味があります。



私、虫は苦手です。

触るのはもちろん、見るのも。。。

てんとう虫とだんご虫は大丈夫、あとはてんで無理です。

そんな虫嫌いがよりにもよって虫にまつわる暦ことばをこんなにしっかり頭に刻み込むとは、我ながら不思議な回路です。

ほんとうは虫が好きなんだろうか。。。

15年前の自分はどう考えていたのかわかりませんが、現在の私は今年になってこんな本を読んでいます。



日高敏隆さんは動物学者で、小さな虫から人間に至るまで、生のあるものそれぞれの世界をつぶさに観察し、温かでわかりやすい言葉で、その不思議さ、巧妙さ、豊かさについて広く伝え知らしめてくれる人です。

すっかり日高さんの文章の虜になり、何冊も読み散らかしています。


たとえばこんな一文。


おまえ、こんなことしているの。

そうなの、こういうふうに生きているの。

その物語がわかれば、すごく親しくなれる。

みな、ようよう今の環境に適応して生きている。

生きることへの深い共感は、そうやって生まれてくる。


ね。


なんかすごく良いでしょ。

あたたかいなあ。

大好きです。


日高さんの本を読んでいると、だんだんと人間であること、動物であること、虫であることの境目がわからなくなってきて、この過酷な地球上で上手に生きている仲間だなあと思えるようになってきました。

虫、キライ!

とはね、言えなくなってきました。

だって、虫はすごいですよ。

季節の変化を的確にとらえて、しっかり生を繋げているんですから。

昔の人は、その自然の中の営みをちゃんとわかっていたんですね。

虫が土から這い出す、その季節の判断には寸分の狂いもないことを。

だから「啓蟄」という暦のことばを作ったんですね。


外的環境に適応するように、生物には恒常性が備わっています。

人間にも、もちろん。


この恒常性を維持するのに大きな役割を担っているのが自律神経です。

自律神経は、自分の意識でコントロールできません。

過度なストレスや姿勢の崩れ、浅く早い呼吸などで乱れてきます。

昨今の急激な気候の変化も、自律神経が正常に働かなくなる原因と言われます。


環境にからだを対応させるための恒常性

それを司る自律神経

でもその自律神経が激しい気候変化で乱れる

からだが環境に適合しづらくなる

恒常性不安定

からだの不調 こころの不調


という負のスパイラルに陥っては大変なことになりますね。


春は自律神経を大切に安定させる季節。

ゆったりと息を吐いたり吸ったりしているとね、勝手に落ち着いてくるのですよ。

一日のうちで、朝と夜。

たった数分。

意識してゆーっくり呼吸してみてください。

あなたの恒常性が、ちゃんと維持される助けになります。

たかが呼吸

されど呼吸

試す価値は、ありますよ。


七十二候では今日から

蟄虫啓戸(すごもりむし とをひらく)

土中で冬眠をしていた虫たちが、暖かい春の日差しの下に出てき始める頃。

虫とはいいますが、冬眠から目覚め始めるすべての生き物のことを表しています。


小さな虫が春を告げています。

佳き春を感じられるように

自分の呼吸で

自分の力で


ちょっとお手伝いが必要な方は菊川へぜひご予約を。


もう一文、好きな日高さんの言葉。


いきものは全部、いろいろあるんだな、あっていいんだな。

つまりそれが、生物多様性。


ほんと、良いなあ。